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平和国家を創造するために、武器輸出3原則を堅持する必要がある

 菅首相の私的諮問機関「新たな次代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄京阪電鉄鉄道株式会社代表取締役CEO取締役会議長)は平成22年8月27日、「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想-平和創造国家を目指して-」と題する報告書を取りまとめ、首相に提出しました。この懇談会は平成22年2月18日の初会合以来9回にわたる会議と14回にわたる勉強会を経ての成果物を出したことになります。報告書は平成16年12月10日決定の現行「防衛計画の大綱」に代わる次期防衛計画大綱(平成22年12月頃策定の予定)のたたき台となるもので、私は早くから注目していたものです。
 
報告書を読んで私が重要だと考える事項は次のようなものです。
1 軍事力の役割が多様化する中、防衛力の役割を侵略の拒否に限定してきた「基盤的防衛力」概念は有効性を失った。また、安全保障環境と国際関係改善のための手段として防衛装備協力の活用等が有効であるとの理念の下、武器輸出3原則等による事実上の武器禁輸政策ではなく、新たな原則を打ち立てた上で防衛装備協力、防衛援助を進めるべきである。(第1章第3節 戦略と手段)
 2 国内防衛産業が国際的な技術革新の流れから取り残されないためには、装備品の国際共同開発・共同生産に参加できるようにする必要があり、国際の平和と日本の安全保障環境の改善に資するよう慎重にデザインした上で、武器禁輸政策を見直すことが必要である。(第3章第2節 物的基盤)
 

「武器輸出3原則」緩和策はすでに各方面から指摘、要望がなされている
 武器輸出3原則とは、1967年に当時の佐藤栄作首相が国会答弁で「武器」の輸出は外国為替及び外国貿易法等により経済産業大臣の許可が必要で、@共産圏向け A国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向け B国際紛争当事国又はそのおそれのある国向け の3例を示して武器を輸出しないと述べたことに発し、その後1978年、三木首相が「対象地域以外への武器輸出も「慎む」こと。武器製造関連設備も武器に準じて扱うことなど、より厳しい規制を設けたことで、事実上一切の武器輸出が禁じられたという経過を辿っています。
 その後長くこの3原則を巡り議論がなされ、解釈の動きがみられてきた訳です。直近では、平成22年7月22日の毎日新聞は「日米開発ミサイル:第三国輸出容認へ 「3原則」例外に」という見出しで、政府は米国と共同開発しているミサイル防衛(MD)の海上配備型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)について、第三国への供与を認める方向で調整に入ったことを伝えています。
 この政府方針は過去にさかのぼってみますと、すでに平成16年12月10日に閣議決定の「防衛計画の大綱」(現行)で合わせて官房長官が談話を出し、その中で「武器輸出3原則を米国とのミサイル防衛(MD)に限定して解禁すると表明しています。平成17年1月10日の共同通信は、米国防総省が日米で共同開発を進めている海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の開発で日本政府と協議を開始することを伝えています。これは日本が昨年末に、ミサイル防衛関連部品の対米輸出を武器輸出3原則の例外としたことに伴う措置だとしています。それ以降も断続的に武器輸出3原則を巡る議論が続いてきまして、平成21年5月には自民党防衛政策検討小委員会が「米国以外の企業との共同研究・開発を認める」ことを提言しましたし、同年7月3日には日本経団連が武器輸出3原則の「緩和」を提言、7月23日の読売新聞は麻生首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」が日米両国による武器の共同開発・生産を視野に入れた武器輸出3原則の緩和を宣言することを報じました。同じく読売新聞は民主党政権下の平成22年1月21日、防衛関連企業が北沢防衛相に武器輸出3原則の緩和を求めてたと報じました。
 

 武器輸出3原則をめぐるこうした一連の動きをみてきますと、わが国を取り巻く国際環境の変容を踏まえつつ、菅首相のもとでもその流れを踏襲していくという方向が見て取れると思います。国家安全保障政策もなんら新味もなく緊張感を欠いたものになるだろうということです。経済界の期待もあるでしょう。環境の変化にも対応する必要はあるでしょう。しかし。武器を扱う政策がなし崩し的に風化していくこと、それは避けなければなりません。
(2010年8月28日)


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